静岡県松崎町にある「室岩洞(むろいわどう)」は、江戸時代から昭和初期にかけて約300年にわたり使われてきた石切り場跡です。
人工的に掘り進められた巨大な洞窟群で、そのスケールと神秘的な雰囲気から「松崎町の秘境スポット」として知られています。
この地で採掘されていたのは、加工しやすさから城郭や蔵、塀の建材として重宝された「伊豆石(いずいし)」です。
松崎町周辺は良質な石材の産地として古くから知られ、室岩洞もその中心的な採石場でした。
明治時代には伊豆石が全国各地へ出荷され、松崎町は一時「石の町」と呼ばれるほどの繁栄を見せました。
採石はすべて人力で行われ、洞内の壁にはつるはしで掘った跡が残っています。
積み上げられた石の台や作業通路もそのまま残されており、当時の現場の空気を体感できる点も魅力です。
内部はまるで地下神殿のような迫力があります。
人工洞窟ならではの直線的な壁面や柱が独特の景観をつくり、自然の洞窟とはまた違った力強い美しさを感じられます。
歴史と探検気分を同時に楽しめる、松崎町でも特に印象深いスポットです。