福島県矢祭町に、春の訪れを誰よりも早く告げる一本の桜があります。
その名は「戸津辺の桜」。
県内で最も早く咲くとも言われているこの一本桜を訪ねてみました。
ナビを頼りに「道の駅はなわ」から車を南へと走らせると、やがて「戸津辺の桜」の案内板が見えてきます。
そこからは誘導員の方の指示に従って駐車し、道なりに歩くと、立派な桜の木が静かに佇んでいました。
淡く、白に近い薄紅色の花々は、まるで春の空に溶け込むように、やさしく咲いていました。
開花から数日が経っていたようで、時折吹く風に花びらが舞い上がり、まるで桜が春の風と遊んでいるかのよう。
見上げながらしばらくその姿に見惚れていると、どこからか小さな鳥のさえずりが聞こえてきます。
声のする方へ目を向けてみると、一羽の鳥が枝に止まっていました。
なんの鳥だろうと思っていたら
「ヒヨドリだね」
近くにいた方がそう話しているのが耳に入りました。
人の目にも鳥の目にも、この桜は特別なものに映るのかもしれません。
もしかしたら、ヒヨドリもお花見をしに来たのかもしれませんね。
心がふんわりと温かくなる、そんな春のひとときでした。