川西町唐院ののどかな集落の奥、古墳時代の記憶をとどめる島の山古墳のすぐ西側に、比売久波神社は静かにたたずんでいます。目立った装飾はないものの、境内に足を踏み入れると、清らかで凛とした空気に包まれます。
参道の一の鳥居から続く道を進み、二の鳥居をくぐると、緑に囲まれた開けた空間に出ます。そこにあるのは、江戸時代初期の建築と伝わる本殿。奈良・春日大社の若宮神社から移築されたもので、県の有形文化財にも指定されています。檜皮葺の屋根、春日造の建築様式は簡素ながらも品があり、長い年月を経ても変わらぬ佇まいに心を打たれます。
境内の左右にはいくつかの境内社が整然と並び、比売久波神社がかつて地域の信仰の中心であったことをうかがわせます。手水舎や狛犬なども整備されており、歴史の重みの中にも穏やかな落ち着きが感じられました。
この神社の魅力は、歴史的な価値だけでなく、地域の暮らしと深く結びついていることにあります。かつては隣接する寺が学校としても使われていたという話もあり、地域の人々の祈りや学びとともにあった場所として、今も静かに守られています。
派手さはありませんが、だからこそ感じられる穏やかさと温もり。歴史の重みを静かに語りかけるような、そんな神社です。
【施設情報】
名称:比売久波神社(ひめくわじんじゃ)
所在地:奈良県磯城郡川西町唐院
アクセス:
近鉄橿原線「結崎駅」から徒歩約25分、または川西町コミュニティバス「唐院」下車 徒歩約5分
駐車場:専用駐車場なし(付近に一時的に駐車可能なスペースあり)
参拝時間:自由(常時開放)
備考:社殿は奈良県指定有形文化財。周囲には国史跡「島の山古墳」もあり、併せての訪問がおすすめ。