鳥取県米子市在住の人形作家 安部朱美さんは、昭和の時代にどこでも見かけた懐かしい暮らしや風景を、和紙や布、粘土等で再現される人気の人形作家です。
登場する一人一人の表情やしぐさだけでなく、背景の細かい部分まで手を抜かずに作り込まれており、その臨場感たっぷりに再現された完成度の高さは眼を見張るものがあります。

2025年は昭和で数えると100年に当たる年。その年にぴったりの安部朱美さんの創作人形展が日南町美術館で開催されました。
日南町は鳥取県西部の山間部にありちょっと遠いのですが、それでもぜひ見たいという期待感の方が勝ります。
会場に入るとすぐ、あたかも今、昭和時代のその場所にいるような気分にさせられます。
会場のあちこちで「こんなことあったねぇ」「そうそう、こんな人いた!」「こんな風に遊んでたねぇ、懐かしい」と言った声が飛び交っていました。

昭和初期は、お年寄りだけでなく着物を着る人が多かったんですね。
もう会えなくなった懐かしい人達の顔がふと蘇ります。
※写真撮影などの許可はいただいています
今回のための新作です。過去にこの家族の結婚式当日の風景が作成されていたようで、これはその続編になるようです。

今では結婚式場で一切を執り行うのが当たり前ですが、昔は家から花嫁さんが出発するのが普通だったようです。お父さんは複雑な表情ですね。
お父さんの右の空間には、鋭意製作中のおじいさんが間もなく加わるとのことでした。
駄菓子屋さんの風景。一人一人の表情が違って面白いです。
奥のガラス容器の中の駄菓子までちゃんと作り込まれているのは驚きました。
ちゃぶ台を囲んで3世代で晩御飯
破れた服を繕って着ることも今やほとんどありませんね。
そして、2010年の国民読書年ポスターに採用された作品です。
読み聞かせをする母親の穏やかで慈愛に満ちた表情が印象的で、一番好きな作品の一つです。
今や見かけなくなったカミナリ親父
昔はよその子でも誰かに迷惑をかけることをすれば叱る大人がいて、子供の親もそれを当然のこととして受け入れていました。今より社会全体に信頼関係と大らかさがあったのかもしれません。
今のように便利で豊かな時代ではなかったけど、素朴で人間らしく生きられた時代だったと、当時を知る人達は皆懐かしく語ります。
時の流れとともに、昭和はどんどん遠くなっていきます。
日南町美術館
住所:鳥取県日野郡日南町霞785
電話:0859-77-1113
開館時間:8:30~17:00
休館日:月曜日