かつて、家族で宮城県角田市を訪れたときのこと。
ふと見つけた小さな展望スポットが、ずっと心の奥に残っていました。
そのとき見られなかった景色を、今こそしっかりと見てみたい。
そう思い、今回は「四方山展望台」へ向かいました。
展望台は、亘理町・山元町・角田市の境界付近に位置しています。
東に太平洋、西に角田市街地。名のとおり、四方をぐるりと見渡せる場所です。
向かう途中、木々の隙間からちらりと覗いた景色がすでに雄大で、胸が高鳴ります。
急かされる気持ちを抑え、ゆっくりと歩を進めました。
やがて見えてきたのは、「これぞ展望台」と言いたくなる外観。
これから目にする景色への期待が、自然とふくらんでいきます。
展望台の中心にある螺旋階段を、あえて下を向いたまま登っていきました。
先に見てしまっては、感動が薄れてしまいそうな気がしたからです。
そして、最上段へ。
顔を上げたその瞬間、目の前いっぱいに広がったのは、どこまでも続く青空でした。
手前には亘理町と山元町、その向こうに横たわる太平洋。
空と海と街とが、穏やかにつながっていました。
思わず、小さく「おぉ……」と声が漏れます。
それは、心の中がすっと軽くなるような、静かな感動。
ふと視線を遠くに向けると、うっすらと浮かぶ牡鹿半島の姿。
かなり離れているはずなのに、どこか近くに感じられる。不思議な距離感でした。
しばらく景色に見入ったあと、西側へと回ってみます。
そこに広がっていたのは、蔵王連峰の重なる山並みと角田の街並み、そして黄金色の田園風景。
視線を移すたびに、まったく違う表情を見せてくれる四方山の展望台。
まさに、四方を望むための場所でした。