静岡県松崎町に残る「旧大沢学舎」は、明治初期の教育の姿を今に伝える貴重な歴史建造物です。
もともとは1873年（明治6年）に建てられた公立小学校で、地域の名主・依田佐二平が私財を投じ、自身の邸宅内に校舎を建設したことから始まりました。
近代教育が全国へ広がり始めた当時、多くの地域では学校を建てるための資金や指導者が不足していました。
その不足を補ったのが、地元の有力者や住民たちの協力です。
旧大沢学舎もその象徴で、地域の教育への強い思いが形となった建物といえます。
校舎は木造2階建てで、和洋折衷の「擬洋風建築」が特徴です。
和風の骨組みに洋風の意匠を取り入れ、特に2階バルコニーの欄干や外観には西洋の影響が見られます。
伊豆地域では明治初期の学校建築がほとんど残っていないため、当時の姿を伝えるこの校舎は非常に貴重な存在です。
地域の近代教育の歩みと、先人たちの情熱を静かに語りかけてくれる文化財として評価されています。
現在、旧大沢学舎は道の駅「花の三聖苑伊豆松崎」の敷地内に移築され、無料で公開されています。
館内には郷土の歴史資料が展示されており、明治時代の学校の雰囲気をそのまま体感できます。伊豆半島を訪れる際には、ぜひ立ち寄りたい歴史スポットです。