高松のアーケード街を南新町まで進み、細い路地を入ったところに、古書店「なタ書」があります。

なタ書は、予約制の本屋として有名です。

ご予約は電話かツイッターのDMなどで。

な夕書に行きたい人は、もれなく店主と直に連絡をとらなければなりません。

始まりからハードルが高いような気もしましたが、この段階で電話をかけたわたしは、店主と一度話ができたので安心しましたし、一気に親近感がわきました。

店主曰く予約制の理由は

「あんまりお客が来ないからです!」
無事予約が取れたら予約時間に店舗へ。

入り口は開け放たれ、古本と書かれた看板やベンチ、壊れたテレビなどがいい味を出しています。

入る前からエモさを感じさせてくれ、問答無用に店内への期待を膨らませてくれます。

狭い玄関で靴を脱いで、これまた狭い階段を上がっていくのですが、この間にも張り紙や本が積んであって情報量が多くて目がチカチカします。

視覚があふれる感覚を味わいながら、階段をあがりきると、そこには本好きにはたまらない、本だらけの空間が広がっています。
本はすべて、店主のセレクトで、店主なりの法則性にのっとって、所定のスペースに隙間なく並べてあります。

文庫本、ハードカバーの本、画集に写真集、絵本や漫画に至るまで、ほんとうに幅広いジャンルの本がそこに在って、わたしは初めて行ったときには歓喜の声を漏らしてしまいました。
興奮冷めやらないわたしに、その時、静かな声で話しかけてくれたのが、なタ書の店主「藤井さん」。

店の一角に大きな机を置き、普段はそこで執筆や値付けの仕事をしている藤井さんは、時折り客とコミュニケーションをとりながら本についてのエピソードや高松のおすすめスポットを教えてくれます。

藤井さんの知識や人脈はとても広く深いので、わたしはなタ書を訪れるたびに、どんどんと自分の世界が広がってゆくのを感じます。

本人はいたって普通を自称していますが、ただそこにいるだけで只者ではないオーラを振りまく藤井さんは、わたしにとってはもはや宇宙です。

このように書くといったいどんな人だと思われるかもしれませんが、普通に古本屋の店主なので安心してください。

ただ、確かに言えることは、なタ書は本そのものだけではなく、店主の藤井さんの存在込みで、その輝きを放っているという事実です。
なタ書は誰かが予約をしたら、その時間はだれでも来店できるようになっています。

ツイッターなどで流れてきたその情報を見て、わたしも何度か、誰かの予約時間に便乗してなタ書を訪れました。

狭い店内なのに、いつ行っても誰かしらが本と向かい合い、誰かしらが藤井さんとお喋りしている。

その誰もがパンチの効いた個性的な人ばかりです。

いえ、ここに来ると、どんなひとでも個性が光り、いい意味でパンチの効いた人になってしまうのです。

だから、とても居心地がいい。

この世界にはさまざまな人がいるのだということを、これほど心強いと思える場所はなかなかないと、わたしは思うのです。

な夕書(藤井さん)Twitter