瀬戸内海に浮かぶ島「豊島」は、直島とともにア-トの島として有名です。

豊島では、世界的にもうつくしいと名高い豊島美術館をはじめ、現代アートを代表するアーティストたちの作品を、島のあちこちで観賞することができます。
基本的にアート作品を見るためには観賞料金が必要なのですが、豊島にはフリーのアート作品がいくつかあって、わたしは散歩がてらその作品を眺めるのが大好きです。

今日は、その中でもお気に入りの二つをご紹介します。
まず一つ目は、
イオベット&ポンズ 
「勝者はいないーマルチバスケットボール」。

豊島の形を模したボードに、いくつもバスケットゴールがくっついている遊び心あふれるアートです。

見ているだけでもワクワクしますが、このアート、実際にボールをシュートして遊ぶこともできるんです。
わたしもここに来ると、必ず一回はボールを入れようと試みますが、なにせ自分は運動音痴。

ゴールがたくさんある上に、色々な高さで設置されているので、どこに入れようか迷ってしまい、たいていひょろひょろとしたシュートしか打てません。。

でもなぜか、楽しい。

そもそもこのバスケットゴールにはルールなど存在しないので、自由にボールを打っていいし、目標設定もその人その人で違っていいのです。

決まりごとに縛られていない状態は、ひとを解放的な心持ちにさせてくれる気がします。

アートの解釈は人それぞれですが、「勝者はいない」という言葉は、逆に全員が勝者であるということの裏返しでもあるし、ルールという大前提を取っ払った世界には勝ち負けなど存在しないということなのかな、なんて思ったりします。

アートの意味を考えながらお散歩するのもおもしろいですね。
さて、アート散歩二つ目は、
青木野枝
「空の粒子」。
唐櫃の清水と呼ばれる場所からほど近くにひっそりとたたずむアート作品です。

小豆島まで見渡せる小高い丘の上に設置されていて、鉄という無骨な素材で形作られているにもかかわらず繊細さや儚さを感じさせてくれる彫刻です。

下から見上げると、まるで丸い粒子がいくつも重なって浮いているよう。

このアートは空も含めて作品となっていて、近くにある湧き水の音さえも、作品と一体化し、そこにいると、自分も粒子の一つになったかのような錯覚を覚えます。
空の色が変われば、作品の表情も変わる。

水の音が変われば、作品の温度も変わる。

まさに自然と一体化したアートと言える空の粒子を見ると、わたしは意味もなく故郷を思い出します。

ここにいると、どこにでもつながる空を強く感じるからでしょうか。

アートって、とっても個人的な体験なのかもしれませんね。
豊島では、ただ歩いているだけでも、目を見張るようなうつくしい景色と出逢えます。

そのところどころに、ひとの手で作られたアートという芸術が存在することは、実はとても大切なことのように思えてなりません。

意味があってもなくても、アートは人の心に刺激を与え、今までとは違った感性の芽生えを感じさせてくれると、わたしは信じています。

「心にだって糧はいる」

その一つがアートであるならわたしは嬉しいし、豊島に暮らしていることをとても幸せなことだなと思うのです。