昔、志度にある徳島文理大学に通っていた友達が、当時付き合っていた彼女と、流星を見に朝の四時に、自転車である場所に向かいました。結局、流星は見れなかったらしいですが、そこに到着した時、山の向こうから登る朝日が、あまりにも綺麗で、今でも忘れられない、と語っていました。その友達は来月、彼氏から旦那になります。
そんな二人の思い出の場所が、この房前公園です。広々とした空間に遊具や石のオブジェが並び、奥の小高い丘にはベンチが置かれ、そこから眼下に流れる海と、琴電の線路を見渡すことができます。
敷地内の道の駅源平の里むれには、地元の特産品や、産地直送の野菜、そして海鮮食堂も設置されています。ここの「オリーブはまち丼」は、高松のグルメを代表する名物丼で、休日にはこれを求め長蛇の列が並びます。何度も口にしたメニューですが、タレが染み込んだ肉厚のはまちに、黄身を絡めてご飯と共に頬張る、あの瞬間は何度味わっても忘れられません。
普段から散歩をしたり、ベンチに座って読書をしたりと、何かと利用している公園ですが、やはり思い出深いのは5年前、以前紹介した半空が開催する文学賞の第3回の作品に、この公園を舞台にした話が入賞したことです。
この公園には、はまち丼の他にもう一つ名物があります。静態保存された琴電335号の車両です。文学賞のテーマが「琴電」だったこともあり、ここに立ち寄ってアイデアを練っていました。すると、車両の近くに「石電話」と呼ばれる石でできたオブジェのような電話をみつけ、これは使えるぞ、と思い、遠いじいちゃんの思い出と組み合わせた「石電話」という小説を書きました。
先日、この文学賞がRNCのシアワセ気分という番組で取り扱われ、僕も過去の受賞者の一人としてインタビューを受けました。放送された後、もう一度房前公園に向かい、琴電の車両と石電話を見つめ、小説とは違い、心の中で「ありがとう」と呟きました。海と電車に囲まれた、香川県の原風景の切り取ったような場所に吹く風を、是非ともその身に浴びてみてください。