展覧会の余韻をそのままに、美術館カフェへ
6月のある日、富山県水墨美術館を訪れました。
当時開催されていた特別展「生誕140年 YUMEJI展 ― 大正浪漫と新しい世界」を鑑賞したのが目的です。
(※こちらの展覧会は現在は終了しています)

竹久夢二の繊細な線と耽美な世界観にひたり、どこか夢うつつの気分のまま、美術館に併設されたカフェ「水の時計」へ立ち寄りました。
胸に響いた一言:「人生に、待つ楽しみを。」
そこで出会った、たった一行の言葉が、私の胸にまっすぐ届いたのです。
「人生に、待つ楽しみを。」
最近の私は、「早く結果を出さなきゃ」「与えるばかりじゃだめ」と、どこか急いでばかりいたような気がします。
効率的に、成果を出すこと。スピード感を持って動くこと。
もちろんそれも大切だけれど、気づけば“今ここ”の自分に目を向ける余裕がなくなっていたのかもしれません。

そんなときに、この一言。
「待つこと」に意味があるなんて、いつから忘れていたのでしょう。
ゆっくり抽出された一杯の、澄んだ味わい
このカフェの看板メニューは、水出しコーヒー。
じっくり10時間、低温の水でゆっくり抽出することで、雑味のない澄んだ味わいに仕上がるそうです。
実際にいただいた水出しコーヒーは、まるで湧き水のように清らかで、口当たりがやさしく、けれど深いコクがありました。
一緒に頼んだのは「水出し珈琲ティラミス」。
引き立てのコーヒー粉がアクセントになっていて、しっとりとした甘さの中にほろ苦さが香ります。
目の前に広がる庭園の緑とともに味わうティラミスは、視覚と味覚の両方で楽しめるひとときでした。
時間の流れとともに味わう「待つこと」の豊かさ
静かな店内、ゆったりと流れる時間。
それはまるで、美術館の余韻を引き継ぐような、もうひとつの鑑賞体験でした。

カフェの公式ページには、こんなふうにも書かれていました。
「時間をかける、ということがむずかしい時代になりました。
でも、早くできるということは、楽しみにする時間が減ってしまったとも言えます。
待たなければ得られないものがあります。」
この言葉を読んで、改めて思います。

「待つ」ことは、ただの“時間の浪費”じゃない。
それは、少しずつ自分の内側に何かが満ちていく、静かで豊かな過程。
水が一滴ずつ落ちていくように、自分の心にも、見えない栄養が沁みこんでいく。
忙しさの中でこそ、「待つ時間」を味わいたい
そんな「待つ時間」を愛おしく感じさせてくれる場所――
それが、水墨美術館の「水の時計」でした。

日々の忙しさに追われている人ほど、ぜひ一度、立ち寄ってみてください。
ゆっくりと淹れられた一杯のコーヒーと共に、「待つこと」の贅沢を、そっと思い出させてくれるはずです。
水の時計 富山店
住所 富山県富山市五福777 富山県水墨美術館 館内
営業時間 10:30~17:30
休み 毎週月曜日(月曜日が祝日の場合、翌日の火曜日休み)、その他 富山県水墨美術館 の営業日に準ずる
電話 090-4593-4992
駐車場 有
公式ページInstagram