どこで見かけたのか思い出せないまま、ずっと心に残っていた景色があります。
作品のワンシーンにそっと紛れ込んでいそうなほど綺麗で、ふとした拍子に思い出しては、いつか行ってみようと思っていました。
今日は、その場所「白幡のいちょう」に足を運んでみました。
県内には、いちょうで名を知られた場所がいくつかありますが、ここは少し特別に感じます。
黄金色に色づいた大きないちょうの下に、朱に染まる鳥居と小さな祠が寄り添うように佇んでいて、自然と人の手がつくりだす景色がひとつに溶け合っていました。
その組み合わせが、自分の心にそっと響いてきます。
訪れた時期は見頃とは言いづらく、葉は地面に多く落ちていました。
それでも視点を変えて、地面から見上げるようにしてみると、足元に広がる落葉が黄色い絨毯のようで、その上から枝がゆるやかに伸びていました。
これはこれで綺麗だな、と素直に感じました。
青く澄んだ空に、いちょうの黄色がひときわ輝いて見えました。
その下に立つ朱鳥居が景色を締めていて、ただそこにあるだけで贅沢だと思える時間が広がっていました。