以前紹介した房前公園の近くに、高松でも指折りのラーメン屋があることをご存知でしょうか?
それがこのラーメン若松です。仕事終わりの帰り道、僕はこの店の前を通り過ぎるのですが、夜の七時から八時の間は、赤く灯った行燈の周りに、大勢の人が集まって、煙草をふかし、ベンチに腰掛け、一塊にぎゅっと集まり、今か今かと順番を待ち侘びているのが見られます。仕事が定時に終わりにならないと、ここですっとラーメンを食べるのは至難の技です。
そして先日、定時に仕事を終え、月に一度ほどの贅沢のつもりで、この店に訪れました。メニュー表はこんな感じ。ラーメン、チャーハンはもちろん、酒のあても完備しており、大勢で飲みにくるのにもぴったりです。徳島文理大学に通っていた友達の寮に遊びに行き、夜遅くにこの店にふらっと寄った時のことを思い出します。
注文したのは豚トロそば(中)と半チャーハン。昼間に働いている食肉工場で、冷凍した豚トロを一つずつ砕き、袋に詰めている作業をしている時、僕は無性にこのメニューを思い出し、勢いよく啜りたい衝動にかられます。胡椒の効いた、肉厚で濃厚な食感の豚トロに、レモンをぶっかけ、麺に絡め、まとめて一気に頬張ると、仕事終わりの疲れた体に電流が走ります。
この店のチャーハンも、待っている間に本でも読もうかと思っていると、さっと出てくるほどのスピーディーな一品です。高温の油と卵を絡めたほろほろとした口当たりは、麺と一緒に口に放り込むと、互いが互いを誘発しあい、気がつくと、容器の中は空っぽになります。水滴の光るコップの水を一気に飲み干し、この店の全ての味を、胃の中で噛み締めるのです。
店の外には冷凍ラーメンの自販機も置いてあり、いつで店の味を自宅に持って帰って楽しむことができます。始まりは小さな屋台から始まったこの若松。次第に大きくなったこの店は、香川県にその名を轟かせる名店となり、今日も行燈の灯りをつけ、人々を待ち続けているのです。