古くから仙台市民に親しまれ、現在もなお身近な存在の「松川だるま」。
宮城県の伝統工芸品である「仙台張子」の代表とも言われる松川だるまは、空と海を表す顔周りの青色と黒々とした両目の瞳が描かれています。大きく見開いた両目は四方八方を見守るため、また伊達政宗公の独眼に配慮したとも言われています。
江戸時代末期に仙台藩の下級武士の内職として始まったのが仙台張子。その中のひとり「松川豊之進」という藩士により創始されたのが「松川だるま」です。そこに「本郷久三郎」が弟子入りし、現在10代目となる本郷家の当主が伝統を受け継ぎ、全て手仕事の工程を守り続けています。
工房の場所は青葉区川平の閑静な住宅街。駐車スペースは1台分のみ。10時の開店時間より5分ほど早く到着したら、工房のドアを開けに出ていた本郷さんとバッタリ。そのまま中へ招き入れくださいました。
畳の上には塗料、型、粘土。そしてさまざまな大きさの製作途中のだるま達。
奥の方からは巨大サイズのだるまが存在感を放っています。たくさんのだるまに見つめられていますが、不思議と嫌な視線は感じません。
サンドウイッチマンの伊達さんのサインがありました!
四方八方を見守り吉祥を呼ぶという松川だるまは、年の瀬が近付くと、今年飾っていただるまをお焚き上げにして、新しいものと交換する風習が今も残っています。そのため買い求める人が増えて工房は大忙しとなります。
その時期は仙台市内の販売店やネットショップでもほとんどSOLD OUTになってしまいますし、工房も予約品を作るのに手いっぱいなので、新規に手に入れたいという方は9月頃までに購入または予約しておいた方がいいでしょう。
工房から一度も外に出ていない無垢なだるまが欲しくて、購入出来るものがあるかどうか伺ってみたところ「3寸のこれならいいよ」と可愛らしい大きさの松川だるまを手に入れることができました。スマホより小さいだるまです。
ちなみに松川だるまは「大黒様」「宝船」の2種類があり、私が購入したのは「大黒様」です。「宝船」は値段が大黒様の数倍ですが、人気商品ため予約しないとおそらく入手困難と思われます。ご注意ください。
あまり長居しても邪魔になるので「そろそろお暇します」と声をかけたら「これ車の中で食べてって」と奥様が「萩の月」を下さいました。ほんの15分ほどの滞在でしたが、なんとも言えない暖かな気持ちになりました。ご当主といいい、奥様といい、だるまにお人柄が現れていました。
※「松川だるま」は「仙台張子」という工芸品の中のひとつという括りなので、本郷さん以外にも制作しているところがあります。