丸亀うちわミュージアムが支える、産地継承と人材育成 ― 400年続く地場産業を、次の世代へ
創作・アート
香川県・丸亀市
香川県丸亀市にある丸亀うちわミュージアムは、丸亀うちわの歴史や製作技術を紹介する展示施設であると同時に、国の伝統的工芸品として指定されている「丸亀うちわ」の継承と発展を支える拠点として運営されている。

丸亀うちわは、一本の竹から骨を広げる独自の製法を持ち、四百年以上にわたり丸亀の地で受け継がれてきた地場産業である。
一方で、職人の高齢化や後継者不足、事業者数の減少といった課題も抱えており、産地として技術をどのように次の世代へ引き継いでいくかが、長年のテーマとなってきた。

こうした背景のもと、丸亀うちわミュージアムでは「展示」「実演」「学び」「育成」を一体的に行う体制が整えられている。

館内では、歴史的なうちわや資料の展示に加え、製作工程を再現した模型や職人による実演を通して、丸亀うちわの構造や技術を来館者が具体的に理解できるよう工夫されている。
実演コーナーでは、伝統工芸士や丸亀うちわマイスターが、竹を割り、骨を整える作業を実際に行っている。

丸亀うちわの骨づくりは、竹を細く割る「割(わき)」から始まり、繊維を整えながら形を整える「もみおろし」、骨を均一な厚みに整える工程など、複数の手作業を経て進められる。

材料には主に真竹(マダケ)が使われ、三年から五年ほど育った竹が作業に適しているとされる。硬すぎる竹はしなりが少なく、仕上げの工程で折れやすくなるため、素材を見極めることも重要な作業の一つとなる。
実演コーナーで作業を行っていた伝統工芸士の長谷川秋義さんは、うちわづくりとの出会いについて「病気のリハビリとして指先を動かすためにここを紹介されたことが始まりだった」と話す。

脳梗塞の後遺症で、手がうまく動かず、言葉も思うように出ない時期もあったが、その後も作業を続け、現在まで約二十年にわたりうちわづくりに関わってきたという。
道具の扱いについては、「刃物はよく切れる状態にしておくことが大切」と語る。切れない刃物で無理に作業をすると大きなけがにつながるため、日々の手入れを欠かさないという。

また長谷川さんは、地域の小学校で行われる体験授業にも参加している。毎年、小学校から依頼を受け、うちわづくりの体験や骨づくりの工程を子どもたちに伝えている。

体験をきっかけにミュージアムを訪れる子どももいるといい、「大人になったときに少しでも覚えていてくれたらうれしい」と話していた。
一方、丸亀うちわマイスターの𠮷川里美さんは、竹細工の講習をきっかけにうちわづくりに関わるようになった。現在は別の仕事と並行しながら、丸亀うちわミュージアムに通い製作を続けている。

竹は一本ごとに性質が異なり、同じ厚みに削ることも容易ではない。骨の厚みはおよそ2.5〜3ミリほどに整えるが、竹の状態やその日の感覚によって微妙に変わるため、思い通りに仕上げることは簡単ではないという。

「昨日と今日でも感覚が違う。竹によっても違うので、同じものを作るのは難しい」と
𠮷川さんは話す。
丸亀うちわの製作は、かつては工程ごとに分業で行われていたが、現在では一人の職人が骨づくりから紙貼りまで一貫して手がけることが多い。

骨の長さや本数には細かな規定があり、こうした基準があることで分業でも同じ形のうちわを作ることができたという歴史がある。

丸亀うちわミュージアムでは、丸亀うちわの基本技術を学ぶ「技術技法講座」も実施されている。講座では一定期間をかけて基本工程を学び、その後、希望者は研修を通して技術を深めることができる。

講座修了後には一年ほどの研修期間が設けられ、その後は自ら製作を続けたり、作品を販売したりする道も開かれている。
こうした取り組みは、産地の後継者育成事業の一環として行われている。

丸亀うちわは、竹という素材の扱いから骨づくり、紙貼りに至るまで、多くの手仕事によって成り立つ工芸品であり、技術を継承していくためには実際の作業を通じた学びが欠かせない。

また、丸亀うちわミュージアムには香川県うちわ協同組合連合会の事務局も置かれており、教育事業やイベント参加など、産地全体の活動を支える役割も担っている。県内外のイベントで展示や実演を行うことで、丸亀うちわの技術や文化を広く伝える機会も設けられている。

現在、うちわの多くはプラスチック製が主流となっているが、竹うちわならではの風のやわらかさや使い心地に魅力を感じる人も少なくない。来館者に実際に仰ぎ比べてもらうと、その違いを実感する人も多いという。
𠮷川さんは「まずは竹うちわを知ってもらうことが大切」と話す。

見たり体験したりする機会が増えることで、興味を持つ人が少しずつ増えていくことを期待しているという。

丸亀うちわミュージアムは、展示施設としての役割にとどまらず、技術を伝え、人材を育て、産地の活動を支える拠点として機能している。

この場所で続いている取り組みは、丸亀うちわという地場産業を次の世代へつないでいくための基盤となっている。
施設名:丸亀うちわミュージアム
所在地:香川県丸亀市中津町25−1
Webサイト:https://marugameuchiwa.jp/museum
連絡先:0877-24-7055
地域連携 FreeLife Colors メディア事務局
掲載日:2026-03-25
更新日:2026-03-25
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