奈良県川西町にある「島の山古墳」。大きな幹線道路から少し離れた場所に、静かに佇むこの古墳は、観光地としてにぎわう場所ではありません。しかし、だからこそ味わえる空気と、静けさの中に広がる古代の風景に、心を奪われました。
ここを訪れて最初に感じたのは「音のない時間」でした。鳥のさえずり、風が木々を揺らす音、足元で草を踏む自分の音。すべてが自然に溶け合い、時間がゆっくりと流れていくのを感じさせます。
島の山古墳は、全長200メートルもある前方後円墳で、馬見古墳群のひとつ。国の史跡にも指定されていますが、実際に行ってみるとそのスケール感よりも「身近に古代を感じられる場所」という印象が強く残りました。
特に印象的だったのは、古墳を囲む濠です。まるで水に浮かぶ島のように見え、その中に「出島状の構造」が存在することが最近の研究で明らかになったそうです。この出島は直接見ることはできませんが、見えないものを想像させてくれるという点で、より一層この場所を魅力的にしています。
地元の人たちにとっても散歩コースとして親しまれているようで、何人かとすれ違いましたが、みな穏やかな表情で歩いていたのが印象的でした。「観光地化されすぎていない」というのは、ある意味で贅沢な価値なのかもしれません。
【施設情報】
名称:島の山古墳(しまのやまこふん)
所在地:奈良県磯城郡川西町唐院
アクセス:近鉄橿原線「結崎駅」から徒歩約25分/JR桜井線「巻向駅」から車で約10分
備考:周辺に駐車場あり。見学自由(無料)。案内板あり。季節によって草木の色づきが楽しめます。