仕事から帰ってきた息子に、おいしいお蕎麦食べに行こうよ、と誘ったのは、子どもの頃に母や母の実家がお気に入りでよく食べさせてもらったお店の麺類を、久しぶりに食べたくなったからです。
神戸市東灘区、甲南本通り商店街の北西すぐ、福助さん。
平成7年の阪神淡路大震災で壊滅状態となった甲南本通り商店街、甲南市場、新甲南市場が半分も元の姿を留めず、多くのお店がなくなってしまった地域で、福助さんは28年数カ月経つ今も、そこに残っていてくれました。
国道2号線沿いで、三井住友銀行甲南支店がすぐ横なので、よい目印です。
息子は昔から、冷たい麺より温かい麺、それもお蕎麦が好きで、夏場でも温かいお蕎麦を選びます。
既に独立して家を出ている上の息子は冷たいお蕎麦派、わたしはうどんでもお蕎麦でも冷たいほうがいい、という家族構成だったので、その頃家で作り分けるのは大変でした。
麺はおいしいお店に行こう、と震災で住めなくなった町を離れて久しく行っていないお店に、多少はフットワークが軽くなった息子(原則出不精)を誘うと、お蕎麦に釣られて同行です。

お値段も、覚えている量と味に対して、とても親切です。
息子はそば定食(もちろん温かい)を、わたしは、しぐれそばをお願いしました。
しぐれそば、こちらは冷たいお蕎麦に、おろしと天かすと生卵、鰹節とネギが乗っています。

「おいしい!」
と声が出ました。
定食のおそばを食べている息子に感想を訊くと
「うん、おいしいで」
と食べるスピードがかなりのものです。
初めて連れて行ったけど、気に入った様子でわたしもうれしい。

つゆの最後の一滴も残したくない味は、わたしが覚えているそのままか、さらにおいしくなったように思えます。
息子と
「また行こうね」
と帰り道。