漫画家 水木しげるさんと言えば妖怪です。水木しげるさんが妖怪研究家、妖怪を描く漫画家の人生を歩むきっかけを作ったのが、のんのんばあこと景山フサさんです。
実話を元に描かれた漫画「のんのんばあとオレ」によると、幼い水木しげる少年は、周りで起こる親しい人の死や理不尽な別れの悲しみを、のんのんんばあが語る目に見えない世界や妖怪の存在を通して乗り越えるヒントを得ていたように思います。

イラストレーター、エッセイストで漫画家の南伸坊さんが書かれた漫画「のんのんばあとオレ」の解説に、のんのんばあを的確に評した言葉があります。

「のんのんばあは、子供と大人、悪人と善人、お化けと人間の区別をしない、貧乏で無学な思想家だった」(引用 「のんのんばあとオレ」解説より)
水木しげるさんの人柄とよく似ています。
そんなのんのんばあこと影山フサさんは、現代で言うと祈祷師のような拝み屋さんという神仏に祈る仕事をされていましたが、夫の死後、水木さんの家でお手伝いさんをされます。

また「のんのん」とはこの辺りの方言で「仏様」の意味です。幼い子供に仏壇を教えるのに「のんのんさん」と言ったりします。
のんのんばあは一畑薬師の信仰が深く、水木少年が4歳の頃に一緒にお参りしたこともあるようです。
そんなのんのんばあの故郷は、鳥取県境港市がある弓ヶ浜半島と海を挟んで北側に横たわる島根半島の北側にある島根県松江市美保関町諸喰(もろくい)です。
境水道大橋を渡って美保関方面に進み、途中で島根半島を横断して山を越えると日本海に面した小さな集落が諸喰です。
手作りの道しるべがありました。
坂道をひたすら下って諸喰の集落に入ってしばらく進むと、一気に視界が開けて海と諸喰港が目に飛び込んできます。
集落全体が昭和レトロな懐かしい雰囲気です。
諸喰港の端にあるバス停はまるで昭和のドラマに出てくるようなバス停でした。
のんのんばあこと影山フサさんの出身地を伝える碑がありました。
少し集落の中を除くと、やはり昭和レトロな趣深い家並みが続いていました。
諸喰の現在の住人は約120人、山と海に囲まれた土地に意外と多くの家がありました。
港の西には奢母智神社(しゃもちじんじゃ)があります。
漫画「のんのんばあとオレ」は水木少年とのんのんばあの実話を元にした物語で1991年にドラマ化され1992年には続編もできました。
鳥取県境港市の水木さんの実家近くにある「正福寺」の地獄絵を2時間も眺める水木しげる少年を、いつも黙って見守るのんのんばあの存在は、偉大な漫画家水木しげるが誕生する大きな要因になったことは間違いないでしょう。
今尚、昭和レトロなたたずまいの諸喰は、いかにも妖怪や漫画家水木しげるさんを伝えるにふさわしい町でした。
水木しげる少年が妖怪と出会うきっかけを作ったのんのんばあの故郷として、これからどんどん盛り上がりそうです。

のんのんばあの故郷
住所:島根県松江市美保関町諸喰623
電話:0852-72-3440