「今年も子平町(しへいまち)の藤の花が見ごろとなり、一般公開が始まっています」
5月になってローカル局のアナウンサーからのこのセリフを聞くようになると、またひとつ季節が進んだなあと感じます。
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仙台の季節の風物詩ともなっている仙台市指定天然記念物「子平町の藤」は個人宅の庭にあり、更に板塀で囲われているので普段は見る事が出来ません。
この銘板が掲げられた時のみ、扉が解放され、無料で見学が可能になります。
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花の咲き具合を見定めたご当主の方が解放期間を決めるので、毎年いつ頃になるのかは決まっていません。そのためローカルニュース頼りとなるわけです。
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この「子平町の藤」は、仙台藩祖伊達政宗公が朝鮮出兵の際に持ち帰り、現所有者の千田家の先祖が拝領したものと伝えられています。伊達政宗が従軍した文禄の役(1592-93年)から持ち帰った苗そのものとすれば樹齢430年を超える古木です。西公園や青葉城址にある臥龍梅(がりゅうばい)も同様です。
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この家の主である千田家は元々、宮城県北~岩手県南を治めていた葛西家に仕えていましたが、天正18年(1590)に葛西家が滅亡のあと政宗公に御大工として召し抱えられて当地に移り、藤とともに暮らしてきました。
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藤は藤棚にしつらえられていますが、その規模たるや430年以上続く御屋敷の庭園であるからこその迫力。
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複雑に入り組んだ幹や蔦の造形に藤の持つ生命力とこれまでの長い歳月を感じます。
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1メートル以上もある藤の花に触れないように歩いていると、タイムスリップしたような感覚に陥ります。藤の花の香りのせいでしょうか。
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ただ、足元が置き石のみであまり整備されていないので、撮影に夢中になっていると、足を取られてコケます。充分にお気を付けください。
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令和6年(2024)の一般公開は、5月5日(日)~9日(木)の10時~16時。最終日になんとか間に合いましたが、平日にもかかわらずこの見事な藤を見ようと、沢山の方が訪れていました。