鳥取方面から出雲大社に向かう折、いつも「鰐淵寺」という標識を見ていたので、この有名な山陰の紅葉の名所をいつか訪れたいと思っていました。
しかし、実際訪れてみると出雲大社とは異なり、かなり山深い場所で驚きました。
それもそのはずなんとあの弁慶の修行の地だったのです。
出雲の山々に囲まれた鰐淵寺参拝の様子と、知らずに行くと大失敗!になりかねない情報も紹介します。
<鰐淵寺駐車場から根本堂まで>
鰐淵寺(がくえんじ)はまず、駐車場から上りの坂道を15分から20分歩きます。若い人や健脚の方は良いのですが、歩くのがあまり得意でない方やヒールのある靴で行くと、参拝そのものを断念せざるを得ないかもしれませんので注意が必要です。
特に、根本堂参拝だけでなく弁慶が修行したと言われる浮浪の滝(ふろうのたき)にも行きたい方は、運動靴が必須です!
※下図は駐車場から渓谷に沿って坂道を上がる途中
鰐淵寺はあの武蔵坊弁慶の修行の地でした。
弁慶と言えば、言わずと知れた牛若丸と弁慶のあの弁慶です。自身が名乗った「武蔵坊」という名前から、私は勝手に武蔵国の出身とばかり思っていました。
しかし、弁慶が現松江市本庄で生誕したことは、この日鰐淵寺に来る際、偶然立ち寄った「道の駅 本庄」で初めて知りました。
さらに、18歳でここ鰐淵寺に入門し、その後、比叡山に行くまでの3年間この地で修業をしたと、ここ鰐淵寺駐車場の説明書きで知ってびっくり!
行き当たりばったりのこの旅が、予期せずつながったことに驚きました。
※下図は駐車場にある説明書き
とにかく参道のかなり下方を流れる川の音、鳥の声、風で揺れる木々の音を聞き、川岸の断層を見ながら進みます。タモリさんのように断層マニアなら楽しめそうな参拝道です。
体力勝負の道中でしたが、紅葉の名所らしい鰐淵寺らしく紅葉が美しい場所もそこここにあります。
この時はまだ紅葉が始まったばかりの頃で、これから鮮やかな色に変化するにつれて、この険しい参道を多くの方が訪れることでしょう。
ゆっくり歩いて20分ほどでやっと山門が見えてきました。
広い鰐淵寺の境内と周囲の山々全体が弁慶の修行の地だと思うと、この過酷な環境もうなづけるのと同時に、弁慶への親近感も覚えます。
鰐淵寺の歴史は古く、智春上人がこの地の奥にある浮浪の滝で推古天皇の眼病平癒を祈願したところ、それが叶ったことをきっかけに594年に建立されました。
さらに、修行中に上人が仏器を滝に落とすと、滝に住む鰐(ワニザメ)がそれを口にくわえて淵(ふち)から上がってきたという伝説にちなんで、鰐淵寺と命名されたと言われています。
※昔、山陰や中国地方の山間部ではサメのことを鰐(ワニ)と呼んでいました
山門をくぐり、少し進むとようやく参拝受付に着きます。思った以上に長い道のりでした。
大慈橋を渡り参拝料を払って正面の階段を上がれば根本堂です。
でも遠くからこの石の階段を見た時、少し不安になりました。あと何段上がるのだろう・・・
このあたりの紅葉もまだまだこれからという感じで、そのせいか参拝する人は少なく、歴史に育まれた寺と自然を心ゆくまで堪能するにはちょうど良いタイミングでした。
杖を使って参拝する方も少なくないようです。
やっと根本堂に着きました。
鰐淵寺の創建は594年ですが、現在の根本堂は1577年に毛利輝元が再建したもので、出雲市指定文化財に指定されています。
中世の姿そのままの根本堂は、柱の1本1本に歴史の長さを感じます。
また、鰐淵寺は平安末期には修験道の聖地としてすでに名を馳せていたそうで、室町時代まではかなりの賑わいがあったそうです。
弁慶はここでどんな祈りを捧げたのだろう?ーと想像したり、その後の彼の人生を思う時、ここまで来た甲斐があったなぁと感慨深いものがありました。
鰐淵寺の弁慶伝説は、もう一つあります。
平家との闘いの後、弁慶はしばらく鰐淵寺に滞在したらしいのですが、その道中で、お隣り鳥取県大山寺に立ち寄っています。
弁慶の怪力を伝え聞いていた大山寺の住職が、「もし大山寺の釣鐘を鰐淵寺まで持って帰れたら、その鐘を差し上げよう」と提案したところ、弁慶はその日のうちに釣鐘を100km離れた鰐淵寺まで持ち帰ったそうです。
その時の釣鐘は、国の重要文化財に指定され、出雲大社のすぐ近くにある古代出雲歴史博物館に寄託されています。
そして現在、鰐淵寺にはその釣鐘を彷彿とさせる替わりの鐘が置かれています。
鰐淵寺の参道は長い坂道を歩く苦労はありますが、それをおしても紅葉の季節には、弁慶に会いにまた来たいと思わせてくれるお寺でした。一人でゆっくりと俗世を離れて思索にふけりたいときにもおすすめです。
鰐淵寺
住所:出雲市別所町148電話:0853-66-0250
拝観時間:8:00~16:15入山料:大人500円、中高生300円、小学生200円
駐車場:無料有り(寺から徒歩約15~20分)
※紅葉は11月中旬頃












