香川県の豊島に移住してから今まで、わたしがつよく感じてきたことがあります。

それは、瀬戸内の青はとてもうつくしい、という事実です。

「青」という1文字で言い表せないたくさんの青を、瀬戸内のそこかしこに見つけることができます。

どこにいても青を感じられることは、瀬戸内に住んでいる人の特権なのかもしれません。
瀬戸内と言いましたが、わたしの行動範囲は豊島とその周辺の島々と高松近辺。

埼玉出身のわたしは、いまだに香川県以外の四国の県に足を踏み入れたことがありません。

そんな行動範囲が狭いわたしでさえ、もう充分すぎるほどの青の景色との出会いがあって、そのたびに息を呑み、感動をもらってきました。

海の青色、空の青色、水平線の青色、島影の青色。

あおという字に「碧」や「蒼」という字などがあるのは知っていますが、わたしは瀬戸内のあおは「青」と表現したい派です。

この一番なじみの深い青という漢字には、さまざまな色彩の青がすべて入っていると思えるからです。
瀬戸内の島々では、3年に一回、「瀬戸内国際芸術祭」というアートの祭典が開催されます。

島には数々の現代アーティストの作品が設置され、人々はそれを自分の足で観てまわります。

島に点在するアートを巡る旅。

この芸術祭は、アートを観賞するとともに、瀬戸内の島から臨める景観のすばらしさを伝えるものとしても貴重な役割を果たしていると思っています。

アートのうつくしさと、その場所そのもののうつくしさが合わさるとき、さらに心打つような美を体感できるのではないでしょうか。

アートをあえて島で観賞することは、瀬戸内という場所への興味や愛着も掻き立ててくれる大切なきっかけになっているはずです。

また、芸術祭の舞台となっている島には、かならず人がいます。

島民とのなにげない瞬間も、その人の心に温かな時間を刻むことでしょう。

そして、瀬戸内国際芸術祭のメインカラーは青。

それこそ瀬戸芸ブルーと呼ばれ、芸術祭の関連グッズやのぼり旗などに使われて瀬戸内の景色のうつくしさを強めてくれています。
今わたしが見ている青と、あなたが見ている青は、違う色かもしれない。

でもそれが瀬戸内の海や空であるなら、わたしたちは同じ場所に立ち、同じ景色を見て、笑いあえるような気がしています。

人間は一人一人違うから、受け取る情報も感受性も色々です。

でも、瀬戸内の「青」はその違いを越えて、うつくしさを共に感じていることを信じさせてくれます。

もしも、瀬戸内の島を訪れることがあったら、青を探してみてください。

きっとどこからでも、あなたの青が見つかるはずです。