穏やかに晴れて本堂も青空に映える土曜日。
その本堂の真横に鎮座するのが護摩堂。
普段はあまり目立たない小さな建物ですが、この日は五色の布をまとい、特別な空間を感じさせてくれていました。
聞けば、もともとはお寺の神棚的な存在だったという護摩堂。
確かに正面にはしめ縄と紙垂が祀られており、紫幕には金毘羅さんと八幡さんの名前が染め抜かれていました。
神仏習合の名残がそこかしこに残っている豊島のお寺らしい、十輪寺の大らかな在り方がわたしはひそかに気に入っています。
「護摩焚き」では、願い事を書いた護摩木を炎の中にくべて、住職さんがお経を唱えながら法要を行います。
基本的には密教系の宗派で行われている行事で、2月の時期だけではなく、適宜護摩焚き祈願を受け付けている寺社もあります。
ここ豊島では、2月の立春を、本当の意味での一年の始まりとし、その前日の「節分」の日に、前年の厄を落としつつ、本年の幸福と安全を祈願するために行われます。
まずは、わたしもみんなと一緒に、護摩木にお願い事を書きつけました。
護摩木は割り木と、木札の二つがあり、割り木の方は片側が護摩札になっていて、願い事の方を焚き上げた後は持ち帰ってご仏壇などに祀ります。
祭壇に火が入り、ゆっくりと炎が上がってゆきます。
住職さんは静かに低い声で、お経を唱え続け、その間も次々と護摩木を祭壇にくべてゆきます。
前年の護摩焚きで持ち帰った護摩札を焚き上げ、今年の護摩木を焚き上げてゆきます。
燃え上がる炎こそが、神様仏様への捧げもの。
この炎を受け取った神仏が、わたし達の厄を落とし、願いを聴き届けてくれます。
長いようで短い40分程度の祈願が終わった時、冷たく清らかな風が護摩堂に吹き込み、炎が大きく膨らんで静まりました。
どこか現実離れした、静かで熱い行事。
持ち帰った護摩札はそっとご仏壇に供えました。
地域のひとたちが昔から大切にしている行事の数々。
少しずつではありますが、わたしもそんな行事に参加をしながら、この土地の空気や土に馴染んでいっている感覚がしています。
今後も、豊島の行事には積極的に参加していきたいなと、春隣りの空を見上げながら改めて思ったわたしです。
ちなみに、護摩焚きはどなたでも参加できます。
豊島では、島外の方も参加可能な行事がたくさんありますので、機会があればぜひ足を運んでみてくださいね。