国指定重要文化財の大神山神社奥宮の27年ぶりの修繕は、一部をクラウドファンディングで集められた1800万円が使用されています。時代の流れに神様もビックリかもしれません。^^

この度の大規模修繕工事では、新しい発見もありました。
現在の大神山神社奥宮は江戸時代に建てられたと言われていたものの、その証拠となる物が無かったのですが、このたび「祈祷札」が発見されたことでそれが証明されました。

下図の大きい方の札が「日課地蔵供再建成就祈祷札」です。

それによると、寛政八年(1796年)に大山寺が消失してから、文化二年(1805年)に再建されるまで、「仁王般若経陀羅尼」(にんのうはんにゃきょうだらに)と「地蔵菩薩本願経屬累品」(じぞうぼさつほんがんきょうしょくるいぼん)を毎日の日課として読誦し強く再建を願っていたと書かれています。

再建に向かい動き出した日から結願(けちがん)した日数は三千二百余りで、札にその数字が書かれているのが読み取れます。

本来は、上棟式が行われた時を示す棟札に再建の日が描かれているのですが、その棟札が現存していないので、今回発見された「日課地蔵供再建成就祈祷札」が、再建の時期を証明する唯一の資料になっています。
もう一つの札は「火伏法祈祷札」(ひぶせほうきとうふだ)で、日付が上記と同じ文化二年(1805年)となっており、再建の際に収められたものと考えられています。

火伏法とは、火をコントロールし抑え克服する修法で秘法とされています。
大神山神社奥宮が二度と火の災禍に会わないようにという強い強い願いが伝わってきました。
今回の修繕には天井画の修復も行われており、使用されている画材を中心に紹介していただきました。
普段は入れない幣殿の高い場所にある天井画、なかなか知るチャンスはないです。
幣殿にある天井画は234面、江戸時代の作と言われています。
表面の顔料がかなりボロボロにはがれていました。
それらの修復に使用された顔料がズラリと並べられていました。日本画にも使われるものです。
緑、青、赤、黄……赤いサンゴなど今や手に入らなくなった画材もあるそうです。
また、大神山神社奥宮の幣殿の内部には、天井画の他に見事な漆塗りの柱があります。
その漆塗りの作業工程を説明していただきました。
下図は、塗り重ねて行くにつれて、塗った漆の色が変化する様子です。

漆塗りは何度も何度も重ね塗りをした後、なんと!銀箔まで貼るのだそうです。
正方形の銀箔を縦横まっすぐに、ラインが曲がらないように貼り進んでいく作業はどんなに神経を使う作業でしょうか。

完成した見本の漆塗りの板を、よーく見ると光の加減でうっすらと正方形のラインが見える場所がありました。これは職人さんにとってはあまり良くない出来になるそうですが、人の手で行う作業ですので仕方ないでしょう。
実際、よほど意識して見ない限りは全然わからないレベルでした。

天井画にしても漆塗りにしても、長い日本の伝統文化が大切に継承されてきたのを感じました。
それぞれの時代で日本の宝である文化財を、脈々と陰で支えている職人さんに感謝ですね。
大神山神社奥宮
住所:鳥取県西伯郡大山町大山1
電話:0859-52-2507
駐車場:数台分有り

2024年10月には奥宮本殿の修善が完了し本殿遷座祭が行われる予定です。