瀬戸内の海は美しい。

その言葉の意味を、身体の芯からわかってしまう場所があります。

それが、瀬戸内海に浮かぶ島、豊島(てしま)の甲生地区の浜辺。
お天気がいい日は、四季を通して青い海と青い空が臨めるし、さらさらとした砂の波打ち際を歩けば、自分が瀬戸内にいるという事実を強く感じさせてくれます。

アート作品もありますし、ビーチコーミングにもうってつけの場所です。

甲生地区は、島の南に位置しているから日当たりもよく、わたしの主観かもしれませんが、明るい空気に充ちています。

仕事で落ち込んだ日にここに来ると、なぜか元気が出る。

やけに近くに見える男木島の島影、その後ろに女木島、遠くにぼんやりと見える高松の建物群。

その間を縫うように広がる青い海。

見上げれば、どこまでも続く青い空。

砂浜に立って、穏やかでおおらかな景色を見ていると、自分の悩みなんかちっぽけなもんだなって思えます。

それは雨の日も同じで、たとえ雨が降っても、甲生の浜から見える景色の美しさは変わらないのでした。

グレイに染まる空や海も、鈍い銀色に光って希望のカケラみたいなものをくれる。

豊島の素晴らしいところは、どの場所もどんな時も、自分の心をオープンにして眺めれば、すべて美しく感じられる点だと思います。
先日、甲生の浜で、友人とお茶をしました。

友人が淹れてくれたジャスミンティーを飲みながら、他愛もない話をする。

この時間のなんと豊かなこと。

BGMは、寄せては返す波音と風の音色だけ。

そこに時折り、友人のハミングが乗る。

しあわせって、何も特別なことじゃなくて、自分にとって大切なものがわかった瞬間なんだなって、その時思いました。
きっと今までと同じで、これから先の暮らしも、嬉しいことばかりじゃなく、悲しいことつらいこともたくさんあるでしょう。

でもそのたびに、わたしは何度でもこの浜辺に立つのだと思います。

瀬戸内の美しさと、そこに暮らす自分の想いを確かめるために。
甲生地区は港からはちょっと離れているので、なかなか足を延ばす機会がないかもしれませんが、レンタサイクルを借りれば簡単にたどり着けますし、バスも走っています。

時間があれば、ぜひ一度訪れてみてください。

甲生から眺める景色はあなたに、あなただけの瀬戸内を贈ってくれますよ。