深い青色のタイルが目印の古民家がうみの図書館。
以前ご紹介したKhimairaのすぐ裏手の道沿いにあります。
もとは漁師の方が住んでいた家だそうで、店主や有志の方々の手で改修し完成しました。
中へ入ってみると、日本家屋の造りを生かしつつ新しさも感じられる空間デザインが広がっていて、なんとも穏やかで落ち着く空気。
名前に図書館とあるように、施設内には本がたくさん置いてあります。
ほぼすべて寄贈によるもので、その数は三千冊にも及びます。
つまりこの図書館は、その偶然とも運命ともいえる出逢いの場所として機能しているのです。販売はしておらず、その場での読書か貸出しのみ。
貸出しは一人5冊までで、貸出し期間は2年です。
2年あればゆっくりと本が読めるし、図書館に泊まった人も、遠方から訪れた人もまたこの場所へ返しに来られる。
まだ多くはありませんが、日本各地にうみの図書館の提携先があり、そこで返却することも可能だそうです。
海辺は漂流したものが流れつく場所。
驚くほど遠い地から、誰でもない誰かに宛てた手紙が流れついたり。
そしてここからまた遠い地に向かって、漂流物は旅をして誰かのもとへと辿り着く。
この「海」「漂流」というキーワードは、うみの図書館の根幹をなす概念です。
うみの図書館にはさまざまな人が訪れ、さまざまな場所から本が集まり、その本と出合う人がいて、その本が引き寄せる人と人との出逢いがあります。
漂流するように、本が誰かのもとへと流れ、その本がまた違う誰かのもとへと辿り着いて、一冊の本が旅をするように世界を巡る。
うみの図書館の中にいると、まさにそのイメージが波のように押し寄せてくるし、わたし自身も流れ流れて、今ココで目の前の本と向き合っていると実感します。
今、わたしが読んでいる本は、いつか誰かが読んだ本。
そう思うと、本そのものが見知らぬ誰かからの温かい手紙のようにも思えてくるから不思議です。
施設内には「海にまつわる本」のコーナーや、全国各地から寄贈された「漂流文庫」など、各所に本が配置され、本好きにはたまらない最高の空間になっています。
奥は宿泊施設になっており、客室内にもその部屋に合わせて丁寧にセレクトされた本たちが並びます。
すこし覗かせてもらいましたが、しずかで快適なお部屋の設えに感動したわたしは、いつか必ず宿泊しようと心に誓いました。
まさに本をゆっくりと読むための、そして、自分のことだけを考えて、自分の時間にじっくりと浸れる場所。
本を持って海まで出て、潮風に吹かれての読書もいいなぁ、なんて色々と夢が膨らみます。
濃密なのに軽やかな、津田の海の気配。
その温度を肌で感じられる「うみの図書館」へ、あなたもぜひ。
あなただけの、今だからこその出逢いが漂い流れながらあなたを待っていますよ。